
シンガポールサッカー界にとって、2025年はまさに「変革の1年」となりました。 秋春制への完全移行後、初となる8月の開幕戦、そして拡大した外国人枠、変化したチーム体制がもたらした新しいチーム編成の波。 スタジアムに響く歓声とともに、私たちが目撃した数々のドラマは、SPLの新たな時代の到来を予感させるものでした。 今回は、シンガポールの熱きサッカーファンのために、この1年の重要なトピックスを振り返ります。
世界的にはサッカーのイメージがないと言われても不思議ではないシンガポール。近年の東南アジア他国の熱狂具合に置いていかれてしまうのではないかとサッカー関係者の間では心配が広がっていましたが、2025年はシンガポールサッカー界にとって飛躍の年となりました。
そんな今年を振り返っていきましょう!
セーラーズのオーナー、Forrest Li氏がシンガポールサッカー協会会長へ就任
2025年4月28日、シンガポールプレミアリーグ(SPL)2024/25シーズンも終わりを迎える頃、シンガポールサッカー協会の会長選が行われ、Forrest Li氏が初当選しました。
同氏はシンガポールにおいての楽天やAmazon的な立ち位置である、Shopeeを運営するSEAグループ(グループ時価総額数兆円)の会長であり、2020年にSPLのHome United を買収し、セーラーズにリブランディング、 豊富な資金力で人気クラブへと成長させた人物です。

Forrest Li氏
2020年当時Forrest Li 就任からセーラーズが獲得した主な選手たち
・キム シンウク(元韓国代表 / 2022年プレー)
・キム ドフン監督 (韓国の名将 / 2022年指揮)
・マキシム レスティエンヌ(元ベルギー代表 / 2025年12月退団)
・バート ラムザール(元オランダ代表 / 現在もプレー)
・ベイリー ライト(元オーストラリア代表/ 現在もプレー)
・アンデルソン ロペス(J1で2度得点王 / 今季加入、現在もプレー)
その他にもキャプテンのハリスやエースのシャワール等シンガポール代表選手も多数在籍。就任より早速リーグの外国人選手枠の増幅を決行し、リーグのレベルを引き上げました。資金力で圧倒的な力を持つセイラーズ有利といった見方もありますが、今後更なる改革が起こりそうです。
セーラーズについての紹介記事はこちらから

ライオンシティ・セーラーズがACL2 準優勝!
前述したライオンシティセーラーズFCがなんとシンガポールチームで初のACL2決勝トーナメント進出を決めたかと思えば決勝まで進出するサプライズ!
ラウンド16ではタイの強豪、ムアントンユナイテッドを2戦合計7-2で圧倒するとベスト8ではサンフレッチェ広島と対戦。
1stレグは広島がホームで6-1と力の差を見せつけるも、試合後になんと広島の新加入選手、フランス人のジェルマン選手に前所属先での累積があることが発覚。本来出場させてはいけない選手を出場させたとして3-0のセイラーズ勝利にひっくり返りました。
2ndレグでは4点差以上で勝利する必要があった広島ですが、慣れないシンガポールの人工芝ピッチとセイラーズの固い守備に苦戦。退場者も出してしまい1-1の引き分けに。合計4-1でなんと広島までラッキーもありながら撃破します。
準決勝はドウグラスコスタ選手が所属するシドニーFC。
1stレグではアウェイで0-1で破れたものの、ホームでは声援を力に変え2-0の勝利。明らかに普段のリーグ戦では集まらないような層が応援に駆けつけ、スタジアムは異様な雰囲気に包まれていました。
決勝はシンガポールのビシャンスタジアムで開催。
UAEのアル・シャールジャと対戦。善戦しましたが1-2で破れ準優勝に終わりましたが、シンガポールのクラブとして、アジアの大会で決勝に進出するのははじめてのこと。アジアで、そして世界で戦えることを証明しました。

日本人選手も全体で20名以上!アンデルソンロペス、風間宏矢などビッグネームがSPLにやってきた!
元Jリーグ得点王、アンデルソン・ロペス選手
なんといっても驚いたのは元Jリーグ得点王、アンデルソンロペス選手の加入。
シンガポールリーグでは間違いなく生態系破壊ですし、現実として試合数 × 2の得点数を記録してしまうこともあり得るのではないかと思っていました。
開幕前のゼロックスカップ的な立ち位置であるコミュニティシールド、そしてリーグ開幕2試合ではノーゴールが続き、現地ではがっかりするような声も聞こえましたが、蓋を開けてみるとACL2では6試合5ゴール、リーグでも結果的に4試合2ゴールと結果を出し、流石の存在感を見せました。セーラーズは戦力としてはリーグ内でも圧倒的な力があるので攻撃の時間が長く、さらに慣れてくれば2026年は爆発の可能性も高いです。

『風間三兄弟』の次男。Jリーグでの豊富な経験を携え、来星した風間宏矢選手
華々しいデビューとタイトル獲得
8月に行われたシーズン開幕戦「コミュニティ・シールド」で、風間選手は圧巻のパフォーマンスを披露しました。ライオン・シティ・セーラーズを相手に、精密な直接フリーキックによるゴールと鮮やかなアシストを記録。チームを4-1の勝利に導き、加入早々に移籍後初タイトルを手にする最高のスタートを切りました。
アジアの舞台(ACL2)での躍動
国内リーグのみならず、アジア最高峰の舞台「AFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)」でもその実力を証明しています。予選から本戦にかけて驚異的なペースで得点に関与し、現在アシストランキングをトップを争います。特に韓国の強豪・浦項スティーラーズ戦で見せたゲームメイクは、現地メディアからも高い評価を受けました。
風間宏矢選手を含む5名の日本人選手がJリーグから加入してきたタンピネス。在籍4年目を迎えるDF山下柊哉選手を含めた日本人6名が躍動し、特に風間選手、鷲見選手、東川選手が存在感を放ちタンピネスの攻撃を支えます。

その他、シンガポールリーグの日本人についてはこちら
シンガポール代表がアジアカップ本戦へ43年ぶり出場
2025年シンガポールサッカー界1番のトピックがやはりこちらのアジアカップ本戦出場。
2027年にサウジアラビアで行われるアジアカップ大会の予選があり、シンガポールは香港、インド、バングラデシュを抑えて1位で本戦出場を決めました。
アルビレックス新潟シンガポールでプレー経験もあり、今はタイの人気クラブであるブリーラムユナイテッドでプレーする、イルハンファンディ選手が決勝点を記録。
本戦出場は1984年ぶりですが、1984年大会はシンガポール開催でホスト国としての出場であったため実力で本戦を勝ち取ったのは史上初と言われています。
サッカーファン以外の国民レベルは全く自国の代表に興味関心がない状態なのが現状ですが、本戦で日本や韓国との対戦となった場合には非常に盛り上がるかと思います。
代表チームでも結果が出始め、これからより国内でのサッカー人気も高まっていくことに期待です。

日本人新オーナーのタンピネス、ACL2予選首位突破で躍進
BGタンピネスローバーズFCがACL2で躍進を見せ、予選を首位突破しました。
セイラーズは残念ながら突破とはならず、今シーズンはアジアでの戦いにおいてはタンピネスに注目が集まりそうです。
タンピネスは風間選手や東川選手の活躍もあり非常に勢いがあります。
2026年1月10日にはカップ戦の決勝でタンピネスとセイラーズが激突。
昨年のカップ戦ではセイラーズが勝利も、今年のコミュニティシールドではタンピネスがセイラーズを破りトロフィーを掲げています。
戦力の整っている両チーム同士の戦いに年始から注目が集まりそうです。
2025年8月の開幕時にはコミュニティ・シールドを制し、カップ戦も決勝進出、ACL2も勝ち進み、リーグも優勝を狙える位置。シンガポール初の4冠を目指して、来年のさらなる活躍が楽しみです。


アルビレックス新潟シンガポールからアルビレックスジュロンFCへ。アルビレックスが来季よりクラブ名とエンブレム変更
11月には1つ大きなニュースがありました。
20年に渡ってシンガポールにおいて日本人クラブを運営しシンガポールサッカーに大きなインパクトを与え続けてきたアルビレックス新潟シンガポールがクラブ名とエンブレムの変更を発表しました。
本拠地とするジュロンイーストスタジアムにあるようにシンガポールの西部に位置するジュロン地区をホームタウンとするアルビレックス新潟シンガポール。
男子チームは2026/27シーズンより、女子チームは2026年春先に開幕する2026シーズンよりアルビレックスジュロンFCに生まれ変わり、より地域の方に応援されるチームを目指します。
チェアマンの是永大輔氏は「2024−25シーズンからローカルクラブとして歩みはじめ、AFC Champions Leagueを目指すことが明確な目標となった今、レギュレーションに沿った変更が必要不可欠でした。」
とクラブ名変更の経緯を説明し、『「クラブの成長をずっと温かく見守り続けてくれているJurong地域に恩返しがしたい」という想いが勝り、今回の決断に至りました。』と前向きな気持ちを綴っています。
エンブレムも従来のアルビレックス新潟のエンブレムを踏襲したものでなく、白鳥をモチーフとした全く新しいデザインに変更。

アルビレックス新潟シンガポールチーム名変更についての記事

いかがでしたでしょうか。
2025年、私たちはシンガポールサッカーの新たな変革を、見届けた1年となりました。 2026年は、北中米ワールドカップもあり、サッカー業界一層盛り上がる1年が予想されます。さらなる熱狂の渦がこの小さな島国も包み込むことを期待して、Majulah Singapura!

